東京

良し悪しは別として
建物を見に出かけることは、すごく大事だと考えている。

狭山の森 礼拝堂
設計:中村拓志
狭山湖畔霊園 管理休憩棟
設計:中村拓志

ボクが感じている、この建築家の作品全般に言えることは、素材の使い方が実に見事なんじゃないかと思っていて。建築というのは、環境へ与える影響というのは図り知れず、それを活かすか殺すかは、形態はもちろん、素材や色の使い方が重要であり、それらをうまく組み合わせることに長けている建築家と言ったらよいだろうか。

特に2つ目の管理休憩棟の水盤を組み込んだ部分。太陽の反射光が天井面に映し出され揺らぐ光景は、まさにあの世とこの世の臨界にある建築を彷彿とさせる演出だと感じた。光が映し出される天井は、大ぶりな垂木で力強くシンプルに構成され、木造の素材そのもので表現したところも心憎い。そして何より水盤には、周囲の木々や空が映り込んだ状況を、建物内部に浸透させる物理的効果をも持っている。素材そのものを持ち込む技術だけでは、人の心には深い影響を与えない。これに加え、周囲の環境との見事な調和(調停)があってこその環境としての建築である。そのことを実に心得ている建築家なのだと思う。

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